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浦安景観まちづくり講座 第2回開催報告


浦安市都市計画課・うらやす景観まちづくりフォーラムの協働事業として、2014年度「浦安景観まちづくり講座」の第2回「水辺の景観を考える」(第2回)が、7月20日(日)午後、市民大学で開催されました。午前中には浦安水辺の会のみなさんによるまちあるきも実施されました。暑い中、21名の方にご参加いただき、どうもありがとうございました。当日の様子をご紹介します。

■境川沿いの水辺まちあるき

午前中は浦安水辺の会・副代表の森泉さんのガイドで境川のまちあるきを行いました。

             

    浦安水辺の会・森泉さん                 まちあるきの様子(午前)

中央公民館に集合し、西境橋から境川西水門で調整される江戸川と境川の関係を確認し、新橋付近での護岸工事施工前、施工中、施工後の様子の違いを確認しました。旧大塚家住宅前では昔の暮らしの様子をうかがい、旧濱野医院、しんなか橋界隈できれいになった土地区画整理事業のまちを見ました。迷路のような路地を抜けて左右天命弁財天の水と緑にほっと一息つき、しおかぜ緑道、境川東水門を経て、湾岸線を越えたところの歩道橋から新浦安方面を眺望し、今川橋を経て、境川わかしお歩道橋で解散しました。


西境橋付近の漁村の名残が感じられる護岸、しおかぜ緑道近くの水辺に近づける階段があるにもかかわらず鎖で入れないようになっている護岸、東水門付近の親水護岸、今川橋を超えたところの防災対策も考えられた護岸とさまざま水とまちの関係を確認しました。

水辺の会のみなさんのガイドのおかげで、境川を歩きながら、水辺に接したまちの移り変わり、親水空間の形成理由を教えていただくことができました。


■フォーラム「水辺の景観を考える」

午後は市民大学へと会場を移し「水辺の景観を考える」フォーラムを開催しました。


●1.江戸川区の水と緑のまちづくり

最初に、えどがわ環境財団・事務局長の長谷川和男さんより、ご講演いただきました。

             

    えどがわ環境財団 長谷川さん              フォーラムの様子(午後)


・江戸川区の水と緑のまちづくりの歩み

江戸川区の水と緑のまちづくりは、昭和41年「江戸川区総合開発基本計画」にはじまる。江戸川区は浦安市の隣に位置し、7つの河川があり、海抜0mが区域の70%を占める。もともと田園地帯で農業用水路が縦横に走る低湿地であり、ミニ開発、ゴミの投棄など環境問題があった。そのため「ゆたかな心 地にみどり」を掲げて土地区画整理事業と下水道整備、仕上げとして公共緑化を進めることとした。

昭和49年に整備された古川親水公園は、当時は生活排水が流れヘドロが溜まりゴミが投げ込まれる悪臭のする川だった。区は埋めて道路にするか払い下げるか検討していたが、区民の理解が得られなかった。「せせらぎが流れる自然豊かな川」を提示したところ賛同が得られ、現在のような親水公園になった。

景気の向上にともない、小松川親水公園(昭和57年)、総合レクリエーション公園(昭和58年)、一之江境川親水公園(平成7年)等、5つの親水公園、18の親水緑道、470の公園・児童遊園等の水と緑のネットワークが形成された。その結果、昭和45年には0.85m2/人だった公園は現在5.27m2/人に、2.6本/人だった樹木は9.3本/人となっている。

・公園の維持管理の特徴

公園樹木等の維持管理は区内を25地区に分割し、各地区を区内の造園会社11社に委託している。樹木の手入れが中心なので安かろう、悪かろうにならないよう、プロポーザル形式の随意契約をしている。日常的な公園の清掃はシルバー人材センター約660人にお願いしている。さらにシルバー人材センターの作業日以外の日に区民ボランティアの方にお願いしている。

・市民の関わり

平成13年、公園ボランティアの登録者数は1,075人だったが、地道に継続的な働きかけをすることで現在は4,048人になった。えどがわ桜守は964人、区の土木部管轄ではまちかどボランティア、緑、水辺のボランティアをあわせると8,601人の登録がある。行政の肩代わりをするボランティアではなく、基本的な部分はシルバー人材センターや造園業者が担い、さらなる魅力に磨きをかける部分を区民が担っていると考えている。

また、区内の親水公園、親水緑道には地元の町会・自治会をベースにした古川を愛する会(6,670世帯)、小松川境川親水公園を愛する会(31,539世帯)などの「愛する会」が設立されている。清掃活動、安全安心のパトロール、自然観察会等、地域の方が川と一緒になった活動をしてくれている。

・景観づくりの取り組み

江戸川区も景観計画を策定し、景観法に基づく届出・協議による規制誘導をベースに、区民主体の活動による景観まちづくりを通じて、誇りの持てる景観づくりに取り組んでいる。

なかでも、一之江境川親水公園は平成18年、景観地区の指定を受けた。当時指定を受けたのは、観光都市である京都市・近江八幡市、親水公園をベースにした江戸川区の3つであった。指定に際して3年間ぐらい地域の方と勉強会を重ね、建物の高さ、色などの制限を受けることを確認しながら進めた。結果として空が見える水と緑の景観を大事にしましょう、よい街をつくっていきましょうという約束の下、景観地区の指定を受けた。その後、平成23年には古川親水公園沿線地区も指定を受けている。

さらに江戸川区では各地区で景観まちづくりワークショップ、えどがわ百景事業、景観まちづくり賞という表彰制度を実施している。


●2.舞浜地区の海岸事業概要について

次に、千葉県県土整備部河川整備課・副主査の松本忠久さんから舞浜地区の海岸事業の内容について紹介がありました。

浦安海岸は昭和40年代の埋め立て造成時に建設されたが、老朽化、軟弱なデルタ地帯に位置するため護岸の不等沈下が確認され、平成14年から高潮対策事業に着手している。

浦安市都市計画マスタープランの記載を参考に、県市で調整しながら管理用道路を用いたサイクリングロード(舞浜大橋から浦安市運動公園まで)、ビューポイント、休憩スペースなどの環境整備を実施している。近年、環境整備の予算は縮小傾向にあり、老朽化対策、津波対策等の安全面に重点がおかれている。

千葉県では新たな整備に着手する海岸ごとに、地元市町村長、関係地域団体、地域住民からなる「魅力ある海岸づくり会議」を招集し、地元意見を取り入れた事業に取り組んでいる。

              

    千葉県河川整備課 松本さん             浦安水辺の会 横山さん


●3.浦安水辺の会の活動について

続いて、浦安水辺の会・事務局長の横山清美さんから、活動経緯の紹介がありました。


浦安水辺の会の活動のきっかけは、浦安の水辺を歩いてみたら立ち入り禁止の場所が多くとてもショックをうけたことにある。今日の歩いた境川にもあったがせっかくの親水護岸が鎖で締められているのは、行政の管理責任があるからだと思う。市民が安全に水辺に触れられれば水辺で遊べるようになるのではとさまざまな水辺での活動を実践している。屋形船でワークショップ、水辺をみる活動、市民が水辺を歩くためのセルフガイド、簡単に楽しく乗れるEボート体験、ライフジャケットの着用安心安全講座、水辺の里海活動、里海を考えるシンポジウム、市民で実行したミニカフェテラスin境川などの実践を重ねてきた。

近年では、若い人たちが運営する団体との連携で次世代につなぐこと、境川の護岸清掃など目的を共有する団体との連携で横につなぐことを考えている。大人も子どもも水辺で遊べる、人がいきいきする景観でのために、一に体験、二に体験と体験の機会をつくっている。


●4.ディスカッション

長谷川さんに対する質疑では、江戸川区の親水公園には柵がないがどういう考え方か? 江戸川区のレベルの高い取り組みの秘訣は? 市民と協働する技術はどの部署が担当か? という質問があり、長谷川さんから、当時の区長の方針が強く転落防止策はできるだけつくらないようにしている、多くの区は財団をなくしているが区民とのパートナーシップを実践する主体として財団を残しているのが大きい、市民との協働は区の生活振興課が担当しており、区の中での組織を横断する連係プレイが非常にうまくっていると回答がありました。

松本さんに対する質疑では、舞浜護岸に駐車場はもうけられないのか? 市や地元との調整で課題は? という質問があり、松本さんから、地元から駐車スペースは不要との意見があった、地元の関係者間で利害が対立する場合もあるのが課題だとの回答がありました。

横山さんに対する質疑では、協働に対して心がけていることは? 景観まちづくりに市民ができることはなにか? という質問があり、人と協議はするがある段階できちんと提案すること、進めていることを少しずつ声に出し理解を得ながら進めることが大事、水辺の価値を伝え続けることが市民である私たちの役割だと思っているとの回答がありました。

   

     ディスカッションの様子

水辺の景観は安全性と親水性の二つの価値を両立させなければならない現代的な課題であり、それは行政や市民、市民同士の協働で解いていかなければならないということを教えていただいたように思います。次回の「みどりの景観を考える」(第3回)にも、多くの方のご参加をお待ちしております。